雑食系 国語教師の【Pillow Book】

春はあけぼの。国語とか教育とか、音楽とかメディアとか、旅とか社会とか人間とか。日本。

【楽曲紹介】Official髭男dism×"教育"(第1弾)

今回と次回は完全なる自己満足記事です笑。いやでも読んでほしい!

もう流行りすぎているので今更語る必要もないと思うのですが、どうしてもこの感動・感激をお伝えしたい!という思いから書いてみます。

テーマは、"Official髭男dismの魅力"!

もうありがちすぎてすみません。でもどうか読んでみてください泣。

 

髭男と言いますと、有名なのは”映画版 コンフィデマンスJP”の主題歌となりました『Pretender』、それと佐藤健に萌えまくると噂のドラマ”恋はつづくよどこまでも”の主題歌となった『I LOVE...』あたりが2大巨頭でしょうかね。もちろんこの2曲は個人的ランクTop5には確実に入るほど大好きですし、名曲であるのも間違いない!

ただまぁ今回はですね、その有名な2曲をご紹介してもしょうがないので、別の視点から書いてみたいと思います。

 

それは、「髭男×教育」です。

髭男の曲には、ぜひ学生や教育関係の方に聞いてほしい!という曲がいくつかあります。それをご紹介したいと思います。

今紹介したいのは5曲あるのですが、一気に書くとおなかイッパイになっちゃうと思うので、今回は2曲だけ紹介します。

 

とその前に、僕個人の考える「歌詞の魅力」についての意見を述べてみます(これは髭男に限らないものです)。ちょっと本業の、読解分析を…。

ストーリーテリングを主とするものとして真っ先に思い当たるのは物語・小説です。小説といっても実に様々なジャンルがあるので一概には言えませんが、小説の面白さや魅力は、やはり「非日常体験」だと思うんですね。自分では経験することのできない世界、自分とは異なる視点や立場の体験などに、まるで自分事のように没入できるのが小説の面白さなのではないかと思うわけです。もちろんそこから色々なことを考えさせられて、自身の考え方や、ひいては行動にまで影響を及ぼすものもあると思います。それでもおそらく「あーこれ自分の経験と全く一緒や」っていう小説は、残念ながらそんなに面白くないのではないかと思います。ドラマや映画も同じ感じでしょうか。

一方、楽曲というのは、それなりに聞く人との接点がないと、受容されるのがなかなか難しいのではないかと思います(歌詞重視じゃない人はあまり気にしないかもしれないけど)。売れる曲、流行る曲というのは、どこかに「うんうん、わかるわかる」という”一般化されたポイント”を持っていると思うんです。

こうである理由はおそらく単純で、まずは小説等に比べて当然伝えられる文字数が圧倒的に少ないことでしょう。短い曲の中で突拍子もないストーリーを語ろうとすれば、それは直で意味が分からない歌詞、何を言いたいのかわからないモノになりかねません。

あとは、小説やドラマ・映画に比べて、何度もリピートされうるという特徴によると思います。本当に売れる楽曲というのはおそらく、1度聞いて度肝を抜かれるものというより、「なんかいいけど、もう一回聞いてみようか」と思って聞いて、気づいたらリピートしてアリジゴクのようにハマってしまう曲だと思うんですね。このサブスク・ストリーミング時代においてはなおさらです。いわゆる「スルメ曲」というのが、息の長い流行歌になるのだと思います(もちろん例外はあり)。

ただ、この「共感を生む歌詞」というのは、ややもすると「ありきたりでつまらないモノ」になる恐れがあります。「言いたいことは分かるけど、なんか聞いたことある内容だなぁ」「あぁこういうフレーズあるあるだよねー」っていう曲、結構ありませんか?だから、この塩梅が結構難しいんだと思います(自分には書けない)。

 

で、まぁここから髭男の話に戻るんですが、その塩梅が髭男は絶妙だな、って僕は思うんですよね。つまり、あるあるとユニークのバランスです。

ほとんどの歌詞をVocalの藤原(フジ"ハラ")さんが手がけているのですが、まず、言葉選びがとても秀逸。他の作詞家には見られない、かなり独特なワードセンスを持っていらっしゃると思います。それでいて、何回か聞いて歌詞に注目していくと「あーそういうことか!わかるわかる!」ってなるんですよね。

今回は解説しませんけど、「犬かキャットかで死ぬまで喧嘩しよう!」とか「115万キロのフィルム」って聞いて、結婚の歌だと思いますか?笑。しかもどっちも聞けばもううーんって唸ってしまうくらい共感できるし、メッチャいい歌詞(結婚してないけど)。

あーダメだ、言いたいことが止まらない。いやしかし、もうとっくに飽きてきたと思うので笑、メロディや編曲、バンド自体の魅力についてはまた今度…。

 

というわけでようやく本題です!

ぜひ中高大学生、そして教育関係の方、あるいはお子さんをお持ちの方!に聞いてほしい髭男の曲を紹介します!!

 

 

■ 宿命

2019年7月に3rd Singleとして発売された楽曲です。メジャーシングルですので知っている方も多くいるでしょうが、ここはあえて選びます!

『Pretender』の熱気冷めやらぬという中で、若干埋もれた感もなくはないですが、あの曲のパワー・インパクトは間違いなくデカいです。

というか、『ノーダウト』⇒『Pretender』という(当時の)にわかファンからすると、『宿命』への”様変わり感”は圧倒的インパクトでしたね。このバンドの幅の広さはいったいどこから来るんだ?!という衝撃を受けました。

この曲は、”熱闘甲子園”のテーマソングでしたが、前面に管楽器音が打ち出された、ブラスバンド風のイントロで始まるのは、甲子園のスタンドで応援する吹奏楽部をイメージしているとか(Vocalの藤原さんと、Baseの楢崎さんは吹部出身!応援経験もあるのでしょうか?)

そういうこともあってこの曲は完全に「球児」にスポットライトが当たっている、というかむしろ球児が一人称の曲ですが、その心情描写や状況描写が見事です。で、それが具体的だからこそ、球児でない人でもその場面に自分を投影することができるのだと思います。圧倒的な具体性はむしろ一般化されやすい(誰にでも理解されやすい)ので、自分の具体に落とし込むことができるということです。

歌詞の一番では、爽やかな光景と、ポジティブな心情が描き出されています。一方で2番では歌詞のムードが一変します。「『大丈夫』や『頑張れ』って歌詞に苛立ってしまったそんな夜もあった」と、努力しているのにうまくいかないといったネガティブな感情をうまく描いていると思います。

そして僕が好きなフレーズは、最後のサビに向かう前のメロの部分の歌詞。

緊張から不安が芽生えて

根を張るみたいに僕らを支配する

そんなものに負けてたまるかと

今宿命ってやつを燃やして 暴れだす

球児と言わずとも、「一点集中」で何かに立ち向かわなければならないシーンなら多くの人に経験があるはず。

「ここを逃したら、後がない」という緊張感は、「失敗したらどうしよう」という不安感に直結します。でもそれまでの厳しくつらい日々を乗り越えたからこその「負けてたまるか」という反骨心と「暴れだす」という強烈な意志。その後の展開は、いかにも試合が開始したかのようで、本当にドラマチックです。

「宿命」というのは元々「生まれ持った運命」という意味ですが、この場合、「自分がこの場に立っているのは運命であり、使命なんだ」ということだと勝手に思っています。そのたどり着いた一瞬の「宿命」にすべてを掛ける気持ちは、自分でいうと大学入試の時にとても似ていて、聞くとその時の気持ちが蘇ります。

ラスサビからの流れでアウトロでブラスがもう一度盛り上がった後、すべての学期が消え、藤原さんの「ただ」という声が響くところを始めて聞いたときは鳥肌ものでした。

コロナの影響で、多くの部活動の大会が中止となっており、高校野球も例外ではないかもしれません。仮に高3生、中3生などであれば、これが最後なのにと、やり場のない悔しさや悲しみを感じるでしょう。そこから簡単に気持ちを切り替えるのは難しいかもしれませんが、でもそこで、それこそ「負けてたまるか」と踏ん張って、また別の舞台かもしれないけど、自分の「宿命」を燃やせる場所を目指して、新たなスタートを切ってほしいと願うばかりです。

 

www.youtube.com

 

 

■ 未完成なままで

2016年発売の『What's going on?』というインディーズ版収録の作品。こちらは『宿命』とは違って、知らない人が大半ではないでしょうか。

歌詞の視点は「僕(一人称)」で、主人公はおそらく進路に悩む高校生かと思われます。自分のやりたいこと、進みたい道なんてまだ全然わからないのに、「理系にするの?文系にするの?大学?専門?」という決断をある時点で下さなければならないという悩みを持つ(持った)人は少なくないと思います。

僕の胸に刺さった歌詞はこちらです。

「天才」なんて柄じゃないし やりたい事も別にないし

「特別」でも「普通」でもない そんな自分を探している

特に2行目ですね。「特別」な存在にはなれないしなりたくはない(目立つのは怖いし)。でもだからと言って、埋没する「普通」な存在にもなりたくない、という思いは自分も経験があるし(今もそうかも…)、すごく共感します。

全体の歌詞はその「進路選択」の場面に焦点が当てられていて、「うん、そうだよなそうだよな」って感じなのですが、割と僕はここにもっと根深いものを見ていて…。

というものやはり日本の教育って、不可逆的(戻れない)・不可変的(変えられない)で、かつ立ち止まることのできないシステムになってしまっているんですよね。一度文系か理系かを決めたらそれを変えるのは本当に大変。どこかで「これはちょっと違う…」と思っても、その大変さと天秤に測ると、続けることを選択せざるを得ない。それに、大学もストレートで卒業するのを良しとする風潮はまだある(積極的な留年とかは全然いいと思うのだが)。それに、この歌詞は、大学生の就活にも当てはまるんじゃないかなと思います。少しずつ変わりつつあるとはいえ、まだ終身雇用神話が完全に消えたとは言えない世の中で、「自分はどうしたいか」とは無関係に安定を選んでいる人もいるのではと思います。

人生100年と言われている時代なのだから、もう少しじっくりゆっくり、余裕をもって自分の人生を決められる社会システムになればいいな、とこの歌を聞いてふと思ったのでした。

(こちらはOfficailな音源が上がっていなかったので割愛します)

 

というわけで、今回は『宿命』と『未完成なままで』の2曲をご紹介しました。

正直言って、次回の3曲の方が、僕的には全く以て良い意味で強烈なんですよね笑。だから今日は「序章編」ということで、次回の本編にご期待頂ければと思います(もうおなかいっぱいって思わないでネ…)。

 

ぜひ、今日紹介した曲、またそれ以外の髭男の曲も聞いてみてください!

流行りには乗りたくないという食わず嫌い系の人こそ、ぜひ!!